一人暮らしの高齢の母。今後の介護へ備え、夫と協力して財産を管理するケース

一人暮らしの高齢の母。今後の介護へ備え、夫と協力して財産を管理するケース

状 況

千葉市内で一人暮らしの母と隣の市に住んでいる長女(一人っ子)からの相談です。母には亡夫から相続した時価2500万円の自宅と2000万円の預貯金があります。母は最近、足腰が弱くなってきており一人暮らしもそろそろ難しくなってきているため、将来的施設に入居することも考えなければなりません。施設に入居すると空き家になってしまうので、売却するか賃貸に出すという選択肢も検討しています。

ただ、しばらくは自宅に住んでいく予定であり、施設に入ったからといってすぐに売却してしまうのもどうかと考えているところです。

家族関係

・父(3年前に他界)

・母(80歳)

・長女(54歳)(近隣居住)夫の持家有

・長女夫(60歳)(近隣居住)持家有

・孫(26歳)(独身)

解決策

所有者である母を委託者、長女を受託者、実際に権利をもつ母を受益者とし、母の自宅と預貯金のうち半分の1000万円を信託財産とする信託契約を締結する。

委託者と受益者が母であり、名義だけを受託者である長女とする信託契約としているため、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しない。

信託を利用することで、徐々に判断能力が低下しつつある状態でも、数年にわたっての日常生活費の送金、自宅の管理や修繕、高齢者施設へ入所後の処分などの行為も信託契約で決めた目的に従い、受託者である長女の判断で母の財産を自由に処分、活用することができる。

長女の夫も母のことを気にかけてくれているので、万が一、長女に何かあったときに備えて後継受託者になってもらうことに。これにより、長女に不慮の事故・病気などがあったとしても、夫が受託者の役割を引き継ぎ信託事務を行うことができる。

もし自宅を売ることになった場合は、母の意思確認をすることなく長女の判断で手続きを行うことができ、売却代金は、受益者である母のものであるため、その管理を受託者である長女が行い、母の生活費等のために使うことが可能となる。

賃貸する場合でも同様に長女の判断で賃貸借契約を行い、家賃の管理も受託者である長女が管理できるため、今後母に認知症が発症しても問題なく管理できる。

最終的に母が他界した場合には、死亡時に残った信託財産(自宅と現金、自宅を売却していた場合には、残った現金)は長女が取得することになる。