兄弟仲が決定的に悪く、親が死亡した際の相続争いを避けられないケース

一人暮らしの高齢の母。今後の介護へ備え、夫と協力して財産を管理するケース

状 況

市川市内で一人暮らしの母と都内に住む長男、母と同じ市川市内住む長女からの相談です。母には亡夫から相続した時価3500万円の自宅マンションと4000万円の預貯金があります。 母は最近、足腰が弱くなってきており一人暮らし難しくなってきているため、そろそろ介護施設に入居することも考えています。入居すると自宅が空き家になってしまうので、売却するか賃貸に出すという選択肢も家族で検討しています。

また、8年前の父の遺産相続の際に長男・長女と次男の間でとても揉めた経緯があり、それから次男とは連絡は取っていません。母も何かと面倒を見てくれる長男と長女に今後の財産管理を任せて、そのまま財産を相続して欲しいと思っています。

家族関係

・父(8年前に他界)

・母(80歳)

・長男(58歳)(都内居住)持家有

・長女(56歳)(近隣居住)夫の持家有

・次男(51歳)(都内在住)

解決策

所有者である母を委託者、長男を受託者、実際に権利をもつ母を受益者とし、母の自宅と預貯金のうち1500万円を信託財産とする信託契約を締結する。

委託者と受益者が母であり、名義だけを受託者である長男とする信託契約としているため、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しない。

信託を利用することで、徐々に判断能力が低下しつつある状態でも、数年にわたっての日常生活費の送金、自宅の管理や修繕、高齢者施設へ入所後の処分などの行為も信託契約で決めた目的に従い、受託者である長男の判断で母の財産を自由に処分、活用することができる。

長女も積極的に信託事務に関与するために、受益者代理人に就任。これにより実質的には、長男と長女の判断で、母の意思確認をすることなく手続きを行うことができる。マンションを売った場合の売却代金や賃貸した場合の家賃は受益者である母のものであるため、その管理を受託者である長男が行い、母の生活費等のために使うことが可能となる。

最終的に母が他界した場合には、死亡時に残った信託財産(自宅と預貯金、自宅を売却していた場合には、残った預貯金)は長男と長女が2分の1ずつ取得することになる。

また次男からの遺留分減殺請求対策として、母の預貯金のうち1500万円を使い終身生命保険(一括払い)に加入する(死亡保険金750万円の保険を2契約。受取人は長男と長女。)。生命保険を活用することで次男から請求されるかもしれない遺留分を減額することができ、なおかつ請求された場合の支払原資として保険金を活用することができる。

併せて信託以外の財産を長男・長女に相続させる旨の遺言書を公正証書で作成しておけば、母死亡時の相続手続きにおいて次男の関与を防ぎスムーズな相続を実現させることができる。