先代から相続したテナントビルが共有になっているケース

先代から相続したテナントビルが共有になっているケース

状 況

■ 不動産 土地4000万円 建物(テナントビル)3000万円

八千代市に住んでいる次男とその長女からの相談です。次男は3人兄弟で先代から相続した市内のテナントビルを兄弟で共有しています。共有になってからは、ビルから生まれる賃料収入は兄弟で3等分しています。次男はビルの近くに暮らしていますので、これまでは管理会社や顧問税理士とのやり取りなどは次男が兄弟を代表して窓口となっていました。しかし、最近は高齢になってきたため、同居している長女に物件管理を助けてもらうことが多くなってきました。

次男は今後の管理に不安がありますし、兄弟が亡くなった後にそれぞれの子たちが相続すると、共有者の数が一気に多くなってしまう可能性もあるので、今のように良好な共有関係が築けるかどうかわかりません。何よりビルの修繕・賃貸契約・売却などの判断も共有者全員一致で行わないとならないことを考えると、この世代にうちに何か対策しておきたいと考えています。

家族関係

・長男(82歳)

・次男(78歳)(八千代市在住)

・長女(75歳)

・次男長女(46歳)(次男と同居)

解決策

所有者である長男、次男、長女を委託者、次男の長女を受託者、実際に権利をもつ長男、次男、長女を受益者とし、ビルの土地・建物と物件の管理に必要な資金として、それぞれ預貯金1000万円ずつを信託財産とする3つの信託契約を締結する(①長男と次男長女②次男と次男長女③長女と次男長女)。

委託者と受益者が兄弟であり、名義だけを次男長女とする信託契約としているため、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しない。

これにより次男長女が受託者として物件管理や家賃の管理を行い、管理費用や修繕費用はその家賃収入から賄う。兄弟に介護・療養などの費用が必要になった場合は、各自の家賃収入から支払いに充てることも可能。

もし兄弟が死亡した場合でも、それぞれの子を第二受益者として指定し相続分に応じた受益権を取得する旨信託契約で定めておくことで、兄弟に死亡により信託は終了せず、そのまま次男長女が受託者として物件管理をすることができる。

その場合であっても、ビルの売却・大規模修繕・賃貸借契約などは、他の親族の承諾を得ることなく次男長女のみの判断で手続きが可能なので、「他の共有者の承諾が得られず物件を売ることができない」などのトラブルを防止することができる。

「ビルを売却すると信託は終了する」と信託契約で定めておくことで、ビル売却の後、売却代金や管理費用として信託した預貯金の残額を、それぞれの受益者に分配することで信託は終了する。

もちろん次男長女の判断で、そのまま所有し続けて家賃収入を得るという選択をすることも可能。